観察やインタビューの気づきを見える形にする方法のひとつだよ
行動や体験の流れを可視化する方法のひとつとして、ジャーニーマップを紹介します。
ジャーニーマップ(カスタマージャーニーマップ)は、ある人の、あるシーンにおける体験を時間軸に沿って見える形する方法です。机上や現場で行なった調査の気づきをもとに、体験の流れや、その体験と相互作用的に生じるタッチポイントや体験者の感情に注目します。
例えば「ある地域における訪日外国人向けの新しいサービス」を考えるプロジェクトを行う場合、ここで「訪日外国人」と言ってもいろんな地域・国の人がいますし、それぞれ来日目的も異なるかもしれません。机上でインバウンドの動向を調べたり、実際にまちに出て訪日外国人の行動を観察したりインタビューして、メインターゲットとなる訪日外国人の理解を深めます。仮のターゲットとして「日本の文化が好きで、今回はじめて来日したカナダ出身のマイケルさん」を立ててみて、日本への旅行中にどこで困っているのか、つまり「この部分はイマイチだな」と思ってるところを見つける手がかりとして、ジャーニーマップを活用することができます。
ジャーニーマップをつくってみよう
実際にジャーニーマップをつくってみましょう。
- ステップ: 「体験前・体験中・体験後」などのように時間軸の大まかなステップを書いてみよう。
- アクション: どんな行動・シーンがあるか書いてみよう。
- イメージ画像: アクションをよく表すような写真やイラストを載せよう。 ビジュアルがあると直感的に理解しやすくなるし、見た目的にも賑やかで楽しい気持ちになるよ。
- タッチポイント: アクションにおいて、どんな接点があるか書いてみよう。詳しくは後続で解説します。
- 感情: アクションにおいて、どんな気持ちになるかを書いてみよう。ポジティブ・ネガティブの両方の感情を書き出すことがポイントだよ。
- 課題: 1〜5を見える形にしたら、現状どんな課題があるかを書いてみよう。
※イメージ画像はmiroというオンラインホワイトボードツールを使っています。紙に手書きで描いても大丈夫です。
ジャーニーマップは、現状の姿(As-Is)を見える形にすることもあれば、解決策を実行した後の未来のあるべき姿(To-Be)を作成することもあります。ジャーニーマップの良い点は、このマップを見れば、どんなことを感じて、どんな経験をしているのかの全体像が見えるようになることです。作ったマップをプロジェクトメンバー全員で見ることで、みんなが同じことを理解して、一緒に改善する方法を考えやすくなる効果もあります。
タッチポイント
タッチポイントとは、ある体験・シーンにおいて体験者がどのように関わり合うか、接触するかの接点を指します。ここでの「接触」は、物理的なものだけでなく、情報や感情、意識のレベルでの交流も含まれます。
例えば、ある地域における「環境保護、教育、公衆衛生」などの社会的な問題に取り組む際、その地域の人々が、その問題や提案された解決策にどう触れ、どう感じ、どう行動変容するかが重要になります。そのため、以下のようなタッチポイントが考えられます。
- 育成プログラムやワークショップ: 問題について学び、解決策を考える場。
- コミュニティイベント: 地域社会での意識向上や解決策の共有の場。
- メディアとの連携: テレビ、ラジオ、ソーシャルメディアなどを通じて、広く情報を発信し、意識を高める。
- アプリやウェブサイト: オンラインで情報を得たり、解決策に参加したりするためのプラットフォーム。
- まちの掲示板・回覧板: 公共の場所で設置されたお知らせなど、日常的な空間での気づきや学びのきっかけ。
※NPO法人ハナラボのプロジェクトで考えたアイデアをもとに制作された訪日観光客向けのパンフレット。
環境や社会、経済のことに考えを広げるジャーニーマップ
ただ利用者や関係者がどんな体験をするかを追うだけではなく、そのアイデアが環境や社会、経済などの観点でどんな影響を与えるかを一緒に考えるツールです。ジャーニーマップの各ステップでのさまざまな影響について一歩引いた視点でも分析することによって、もっと広い視野を持って、自分たちのアイデアが世の中にどう作用するか、想像を広げるきっかけにもなります。
- まず、ジャーニーマップをつくろう
- 環境、社会、経済などの軸を縦軸に追加して、各ステップでの影響を考えよう
※ジャーニーマップの一番下に、インパクトの行を追加してみよう。