テーマに関わる場所や人々を観察して気づきを得る調査だよ
フィールドリサーチ(フィールドワーク)は、机上ではなくテーマに関するフィールドで行う調査です。「百聞は一見に如かず」ということわざがありますが、いくら机上で調べても現場に行かないとわからないことがたくさんあります。
その場で得た感覚を大切にするため、写真を撮り(スケッチでも)、感じたことをメモしておきましょう。
現場で観察する
例えば「プラスチックごみの削減」をテーマにしている場合、フィールドはお店、家のキッチン、砂浜・・・などたくさんありそうですね。テーマに関わる場所で、何が起きているのかを観察することがフィールドリサーチです。
「五感で捉える力」でも説明しましたが、問題意識を持って観察すると、今まで気づかなかったことが見えてきます。「プラスチックを減らさないといけないのに、なぜスーパーの野菜は包装されてるんだろう?」という新たな視点を得ることができます。
家でも学校でも職場でも、観察してみると「あれ?」と思うことがたくさんあります。例えばこの写真を見て、みなさんはどう思いますか?大学に掲示されていた貼り紙です。
たくさんある貼り紙の中で、特に重要なものを赤で囲んで目立つようにしていますが、学生は気づかず素通りしています。周囲を観察するだけでも、誰かの困りごとが見えてきますよね。
人々を観察する
フィールドに出れば、そこには人がいます(大自然だと人はいないかもしれませんが、動物や木々は生息していますね)。例えばスーパーなら、お客さんがどのような動きをしているのかを観察し、行動の理由を考えてみるといいでしょう。
また、インタビューで話してもらったことと、実際が違うなんてこともよくあります。例えば、「できるだけご飯は手作りするようにしている」と話していた人の家に行ったら、冷凍庫には冷凍食品がぎっしり入っていたとか、「うちの地域には何もないんですよ」と言われたのに、行ってみたら魅力がたくさんあったとか。そのギャップが新たな視点をもたらしてくれますよね。だからフィールドリサーチ(フィールドワーク)はmustなんです。
フィールドノートの取り方
現場に出たときの記録の取り方について解説します。
フィールドノートを取ることは、現場での観察やインタビューから得た情報を記録し、それをあとで分析するために行います。記録を取ることで、そのときの印象やうろ覚えな記憶に頼るのではなく、具体的な現場のデータに基づいて問題を理解したり、そこから新しい発見につながる可能性があります。
1. 準備を整える
フィールドリサーチに行く前に、必要な道具(ノート、ペン、ボイスレコーダーなど)を準備して、すぐに使えるようにしておきましょう。スマートフォンのメモやレコーダー機能を使ってもよいです。
2. 観察する観点を決める
リサーチの目的に合わせて、観察すべきポイントや現地の人々に聞いてみたい質問を考えておくのも有効です。
例えば、とある駅でのフィールドワークを例に考えてみましょう。
- 「どの時間帯にどれくらいの人が利用しているのか?」「特定の場所が混雑していないか?」などの人々の流れの観点
- 「案内・サインがどこにあるか?」「はじめて駅を利用する訪日観光客が迷うポイントはないか?」などの案内ガイドの観点
- 「足が不自由な人がどのような設備を利用しているのか?」「高齢者や小さな子ども連れにとって不便な場所はないか?」などのインクルーシブ・バリアフリーの観点
- 実際に足を運んでみてはじめて知ること、体験してみて気になったことなどのあなた視点の観点
3. 記録は詳細に
観察した事柄は、詳細に、丁寧に書いてみること。
その場所に行ってみて、見て、聞いてみて、といった事実はもちろん、その時に感じた自分の感情も記録することで、後から振り返ってフィールドノートを分析するときの洞察につながる可能性があります。また、言葉だけでなく、人々のジェスチャーや表情、声のトーンなどの非言語な情報にも注目して観察してみましょう。
例えば、フィールドノートのメモはこんなことを書いてみましょう。
「4月6日(木)9:30、ホームで多くの利用者が電車を待っている。10人中7人がスマートフォンを使ってる。」
「10:15、券売機で老夫婦が券売機の使い方に困っている場面を目撃。夫が『特急券はどうやって買う?』とイライラした口調で尋ねている。5分くらいしたら駅員さんが出てきてサポートしてた。急いでそうだったから電車が間に合ったのか心配。」
4. 写真やスケッチを利用する
言葉だけでは伝えきれない情報は、写真やラフスケッチを用いて視覚的に記録しましょう。