心の準備編|デザインする力を育てよう

心の準備編|デザインする力を育てよう

俯瞰する力(zoom out)

「ものごとの全体像を捉える力」だよ

全体を見渡そう

まず、この動画をご覧ください。

Powers of Ten™ (1977)

共感することが対象にズームインすることだとすれば、俯瞰することはズームアウトすることです。近づかないと見えないこともありますが、離れないと全体は見えませんよね。問題の周辺で何が起きているのか、根本的な原因は何か、誰が関わっているのかなど、いろんな視点で探る必要があります。そのためにも、対象から少し離れてみる、遠く離れてみるなど、位置を変えて見渡してみましょう。

例えば、友だちが学校に来なくなってしまった、という問題があったとします。友だちに話を聞くと、部活で先輩に厳しく言われて学校に行くのが怖くなってしまったと言います。部活のあと、片づけを忘れて帰ってしまったことが原因だとか。でも、その道具を使ったのは先輩。どうやら、先輩と後輩の関係性に問題があることがわかってきました。先輩が厳しいのは伝統で、長年続いてきたようです。つまり、部活の慣習、それを許容している部員の意識、顧問の先生がその状況を見逃していることも問題ですよね。このままでは負のループが継続してしまいます。

問題の構造が見えてくると、どこに介入すればいいのかも見えてきます。また、新しいアイデアがどこにどんな影響を与えるのかを考えることも必要ですね。だから俯瞰することが大切なんです。

関係性を探ろう

先の例で見たように、ひとつの問題に対して原因はひとつではなく、複雑に絡みあっていることがわかります。全体を見つつ、どんな関係性にあってどのように影響しあっているのかを探りましょう

もしかすると、直接話を聞かないとわからないかもしれません。その場合は、共感する力を活かして対象に近づきましょう。全体を見渡して、さまざまな立場の人に話を聞くことで、より状況が見えてくるはずです。AさんとBさんに話を聞くと、正反対のことを言うかもしれません。それもまた、問題を解く鍵になります。

具体と抽象を行き来しよう

具体を抽象化するためには俯瞰する必要があります。抽象化することによって、これまでにない概念を生み出すことができます。

以前、「女性の美と健康」をテーマに14人の女性にインタビューしたことがあります。その際に体型を気にしているにも関わらず、体重を日常的に測っていない人は14人中11人もいたのです。「数字で現実を直視したくない」「数字で管理する必要性を感じない」、太ったかどうかは見た目や感覚でわかるため「あえて直視して落ち込みたくない、わざわざ体重計に乗ることがストレス」ことがわかりました。俯瞰してみると、女性たちは「体重測定で一喜一憂したくない」と感じていることがわかります。

このように、「体型を気にしている女性は体重を測っているだろう」という予測を覆し、新しい視点を見つけることができました。リサーチだけでなく、いろいろな場面で具体と抽象を行き来することは必要です。具体に集中してしまったら、冒頭の動画を思い出してくださいね。

未来の関係性に想いを馳せよう

社会に新しい価値を与える、素晴らしいアイデアが生まれたとき、一度そのアイデアを遠くから眺めてみましょう。自分たちが対象とした人々にとっていかに素晴らしいアイデアであっても、それがほかの人々に不利益を与えたり、環境に負荷をかけたりしていないか。数十年後に問題を引き起こしたりしないか。

自分たちが生み出そうとしているものが、誰に、何に影響を与えるのか、考慮してください。現在の関係性だけでなく、未来の関係性にも想いを馳せることが大切です。

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