心の準備編|デザインする力を育てよう

心の準備編|デザインする力を育てよう

ポジティブに捉える力

「オープンなマインドで他者や可能性のある未来を受け入れて、ものごとをポジティブに捉える力」だよ

可能性を見出そう

世界でも日本でも身近なところでも、さまざまな問題が起きています。問題を解決しようと思うと、ネガティブな部分に目が向きがちです。でも、その中にも可能性が眠っているかもしれません。「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」という取り組みがあります。「日常生活のさまざまな環境を織り込んだまっくらな空間を、聴覚や触覚などの視覚以外の感覚を使って体験するワークショップ形式の展覧会[1]」です。

まっくらな空間で健常者をサポートするのは、訓練を受けた視覚障害者のみなさんです。視覚障害者のみなさんは、暗闇のプロです。目が見えないことを障害と捉えるのか、利点と捉えるのかで、ものごとの見え方が変わってきます。目が見えないことを利点と考えて生まれたのが、「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」なのです。

つまり、今まで当たり前のように問題だと思っていたことに対して、可能性を見出しています。「いろいろな視点をつなぐ力」でも、これまでとは異なる枠組みでものごとを見る大切さについて述べましたが、可能性を見出すこともひとつの捉え方です。

プロジェクトを楽しもう

プロジェクトを成功する秘訣は「楽しむ」ことです。アイデアを形にするときには、困難がたくさんあります。思い通りにいかないことばかりでしょう。苦しくとも楽しむためには、状況や未来をポジティブに捉える力がとても大切です。ある研究では、ポジティブな感情でもネガティブな感情でもグループに伝染することがわかりました[2]。ポジティブに捉える力は、チームメンバーから大きな影響を受けます。チームづくりについては、「コラボレーションする力」で説明します。

プロジェクトを実行するときには、リスクを考えるなどネガティブな思考も必要です。しかし、困難に立ち向かって何かを変革しようとするとき、ポジティブな姿勢がなければ、息が続きません。何よりも、社会に変化をもたらすアイデアを生み出すためには、他者の心を動かす、ポジティブな発想が必要なのです。

ポジティブな気持ちを伝え合おう

関係者もチームメンバーもお互いにポジティブな気持ちを伝え合うことが大切です。誰しも、ポジティブな気持ちもネガティブな気持ちも持っています。ネガティブな気持ちを発散してスッキリすることも必要ですが、チームの士気を下げることにもなりかねません。必ず最後はポジティブなことばで締めくくるなど、周囲への影響を考慮しましょう。

ネガティブな感情が蔓延すると、ポジティブなことばを発しづらくなり、チームのムードが悪くなります。当然、プロジェクトに支障が出てきます。自分の機嫌は自分でとる、という意識を持つようにしましょう。「できない、ムリ」ではなく、「どうすればできるのか」を考えることが大切です。ゼロから何かを始めるときは、混沌とした状況の中を手探りで進むしかありません。文句を言ったところで、自分たちでなんとかするしかないのです。周囲もポジティブなフィードバックを心がけましょう。

社会課題の解決に挑んでいるという実感を持とう

自分が社会に影響を与えられるかもしれない、という実感が持てると前向きな気持ちになるものです。ネガティブな気持ちになるのも、自分のやっていることに自信が持てなかったり、手応えを感じられなかったりすることが原因のひとつです。また、「自分たちのアイデアで変化を起こせる」と信じられるよう、周囲もポジティブなことばを伝えることが必要です。もちろん、ダメ出ししようと思えばいくらでもできるでしょう。でも、期待されれば、それに応えようとするかもしれませんが、期待されないのにがんばっても意味がないと思う人は少なくないはずです。

ポジティブに活動する人を支えよう

長期のプロジェクトでは、多くの人はモチベーションを継続するのが難しく、上がったり下がったりを繰り返します。プロジェクトにポジティブに取り組んでいても、状況を打破するために最後まで前向きに粘り強く動く人はそこまで多くありません。その中にも、ポジティブに粘り強く活動する人がいます。その貴重な人材が孤立しないよう、肯定し支えるとともに、個別に声をかけて同じように動く人を育てることが必要です。

失敗を楽しもう

ポジティブに捉える力を養うためには、成功体験を積み重ねていくしかありません。実践する力とも重なりますが、「自分にもできる、変化を起こせる」という自信が持てるように、壁を越えてやり抜く経験が必要でしょう。行動すれば失敗する率も高まりますが、その失敗を乗り越えるからこそ次のステージに進めます失敗を繰り返すことで、失敗に対する耐性も身につきます。次のプロジェクトに取り組むとき、できることが増えていることに気づき、「きっと乗り越えられる、きっとできる」とポジティブに捉える力が高まっているはずです。

  1. 特定非営利活動法人ダイアログ・イン・ザ・ダーク・ジャパン, DIALOG IN THE DARK, p11, 2004
  2. S. G. Barsade, The ripple effect: Emotional contagion and its influence on group behavior, Adm. Sci. Q., vol. 47, no. 4, pp. 644–675, 2002
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