体感編|プロジェクトを擬似体感しよう

体感編|プロジェクトを擬似体感しよう

3. いろんな視点で探索してみる

ハナです!古民家について調べ始めたら沼にハマってきたよ

空き家活用セミナーでたくさんの気づきを得た二人。ハナちゃんとアイちゃんはさらなるリサーチへと動き出します。

ハナちゃん、地域について調べる

ハナちゃんは不安と希望を持ちつつ、調査を進める決心をしましたね。人はわからないと不安が大きくなります。調べて疑問を解消することで、不安も解消していくでしょう(また新たな疑問が生まれそうですが)。ハナちゃんは、何を調べようとしているのでしょうか。

空き家活用セミナーで聞いた成功事例では、地域の資源を活用したり地域課題の解消につなげたり、地域の文化を大切にしていることを知りました。地域の人たちをうまく巻き込みながら、地域外の人たちにも関わってもらう、そんな仕組みをつくっていたのです。

そこでハナは、まず地域の資源や課題について調べることにしました。地域の歴史を調べてみると、水源が豊富で江戸時代は染色が盛んだったことを知りました。古来の染色を復活させようと県をあげて取り組んでいるものの、担い手が不足しているという課題がありました。それ以外にも里山や竹林の整備が追いつかず、荒れてしまっていること、高齢化率が全国平均よりはるかに高いこと、移住定住対策をおこなっているが目標を達成できずにいることなど、さまざまな課題が見えてきました

「大学があるから他の地域に比べて有利だと思ってたけど、確かに卒業後に地域に残る先輩はほとんどいないかも」ハナは地域で暮らしていながらも、地域のことをまったく知らないことに情けなさを感じていました。

いろんな課題が見えてきましたね。古民家から地域課題へと、ハナちゃんの視野は広がっています。自治体では総合計画を策定しています。5年後、10年後にどんな地域にすることを目指しているのかがまとめられた資料です。プロジェクトを進める前に、関連する箇所だけでも目を通しておくことをオススメします。

プロジェクトが本格的に動き出したら、役場の担当者にも話を聴きに行き、自治体の取り組みと重複しないか、制度や助成金など利用できるものはないか確認しましょう。

アイちゃん、建築の先生と現地調査に行く

ハナちゃんは古民家の周辺についてリサーチしましたが、アイちゃんは古民家そのものをリサーチします。どんなふうに進めていくのか、様子をのぞいてみましょう。

アイはNPOのサトウさんのアドバイスどおり、建築学科のイシイ先生に相談することにしました。イシイ先生は構造設計を専門としている非常勤講師です。構造の授業は3年生からで、2年生のアイはイシイ先生と面識がありません。連絡先もわからないので、イシイ先生の授業が終わる時間に教室の前で待つことにしました。

「イシイ先生!相談したいことがあるんですが・・・2年のイマイです」教室から出てきたイシイ先生を呼び止めると、うなずいて立ち止まりました。「古民家を再生しようとしてるイマイさんだよね。サトウさんから話を聞いてるよ」。NPOのサトウさんがイシイ先生に連絡をしてくれたようでした。

研究室に移動して事情を話すと「現場を見ないことにはなんとも言えませんね」と言い、現場調査に来てくれることになりました。アイは研究室を出ると小さくガッツポーズをして、すぐにハナにメッセージを送りました。

専門家が身近にいるとはラッキーですね。でも、学生であれば大学、企業であれば企業内に頼れる人がいるものです。周囲にいない場合は、SNSで発信してみるのも手です。誰かが紹介してくれる可能性もあります。

現地調査の日です。大家さん、ハナ、アイの3人が古民家で待っているとイシイ先生がやってきました。イシイ先生は古民家を一通り見たあと、古民家鑑定講習の講師をやっていること、実技講習の現場として利用させてもらえるなら無料で鑑定できること、伝統工法で建築されていて状態は悪くないことを大家さんに伝えました。

「ぜひ、講習の会場につかってください。オーナーさんから一任されているので大丈夫!」どうやら、大家さんとオーナーのすずさんのお母さんは幼馴染で、長い付き合いとのこと。これで、耐震診断に進めることになりました。

実技講習は1ヶ月後。診断次第で計画が大幅に変わります。この間、ハナとアイは、古民家再生についての本を読んだり、隣の県まで事例を見学に行ったりとリサーチを継続していました。気持ちは高まるばかり。結果が出るまでソワソワした気持ちで1ヶ月を過ごしました。

実際にはこんなにスムーズに行かないことも多いですが・・・それでも人のご縁で話が進むことがほとんどではないでしょうか。架空のストーリーですので、ここは多めに見てください。とはいえ、このような形で多面的にリサーチする必要があります。さて、古民家の運命はいかに。<続く>

TOP