解説|デザインリサーチ

はじめに|デザインリサーチ編

リサーチはプロジェクトのはじまりからおわりまで、ずっと続くよ

リサーチはプロジェクトのはじまりからおわりまで、ずっと続きます。ここでは、どんなフェーズでどんなリサーチをするのか見ていきましょう。

探索・探究のためのリサーチ

プロジェクトのはじまりでは、どんなテーマに取り組むのかを決めるため、リサーチします。テーマが見つかったとはいえ、範囲が広すぎてどこから手をつけていいのかわかりません。問題や可能性を探索しながらリサーチします。

例えば、「納得のいかない校則をなんとかしたい」というテーマなら、まずは対象となる校則に対してほかの学生はどう思っているのか、教師はどう思っているのか、保護者はどう思っているのかを調べましょう。

加えて、校則の歴史、他校や外国の校則の状況、文科省の資料、教育研究者の論文などで、問題に関する全体像をつかみます。機会があれば、文科省や専門家に話を聞いてもいいですね。ここまでくると、探索というよりは探究のためのリサーチといった方がいいかもしれません。

当事者へのヒアリングと客観的な資料の双方をリサーチすることで、なぜ現状が変わらないのか、変えるとしたらどこに働きかけるべきなのかが見えてくるでしょう。

探索から洞察へ

リサーチをしてさまざまなデータを集めたら、次は分析して洞察します。

さまざまなリサーチを経て集められたデータから、これまで見えていなかった新しい価値や課題を探ります。これをインサイトを発見する、洞察する、解釈する・・・と表現したりします。

インサイト”insignt”とは、Cambridge Dictionary 英英辞典によると「複雑な問題や状況を、明確かつ深く、時には突然理解すること(日本語訳)」。日本語にすると「洞察」ですね。

関係性や背景、当事者の経験や感情など、複雑に絡み合っている状況に対して、これまで見えていなかった新たな視点を得ること、と考えるといいかもしれません。インサイトを得る方法については「探索しよう・問いをつくろう」で説明します。

アイデアを育むためのリサーチ

探索を通して、どこに働きかけるのか見えてきたら、次はどう働きかけるのかを考える必要がありますよね。アイデアを発散しながら、徐々にひとつのアイデアに収束していきます。

アイデアが生まれたら、今度は類似サービスやプロダクトがないか調べる必要があります。まったく同じ、ということはないかもしれませんが、あまりに似ている場合はほかのアイデアを採用するという手もあります。もしくは、違いを際立たせるために、アイデアを見直す必要があるでしょう。

さらに、アイデアに対して関係者に意見を聞くためのリサーチも必要です。使いたい、使いやすいと思ってもらえるのか、プロトタイプや完成イメージを活用して検証していきます。関係者を集めてワークショップを開催するのもいいでしょう。

現場に寄り添うリサーチ

アイデアは小さく試して、検証しながら完成イメージに近づけていきます。検証のプロセスでも、改善するために利用者や関係者に意見を聴くなどリサーチが欠かせません。

このように、どのプロセスでもリサーチが必要だということを理解していただけたでしょうか。

5つのリサーチ方法

リサーチの場面がたくさんあることは理解できましたよね。リサーチにはいろいろな方法があります。ここでは、5つの方法を紹介します。

デスクリサーチ
書籍・論文・記事など資料を活用して情報を集めて、整理する

フィールドリサーチ
テーマに関わる場所や人々を観察して気づきを得る

インタビュー
話を聴き、相手を知り、本質的なニーズを理解する

質問紙調査(アンケート調査)
対象とする人々の傾向を掴むため、定量的な情報を収集する

ワークショップ
対象とする人々に意見交換してもらったり、アイデアを出してもらったりしながら、新たな視点を得る

次ページから、一つずつ説明します。リサーチをしてさまざまなデータを集めたら、次は分析してインサイトを発見、つまり洞察します。インサイトを得る方法については「探索しよう・問いをつくろう」で説明しています。

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