テーマに関して、いろんな可能性を探索するよ
テーマが決まったら、次はテーマに関して探索します。今は漠然と「地域資源を活かしたい」「プラスチック削減に取り組みたい」「納得のいかない校則をなんとかしたい」など、大きなテーマが見つかった状態ですね。テーマが見つかったとはいえ、範囲が広すぎてどこから手をつけていいのかわかりません。そこで行うのがリサーチ、調査です。
テーマのどこにフォーカスするのか
まず「プラスチックごみの削減に取り組みたい」を例に考えてみましょう。まず、なぜプラスチックごみの削減が必要なのか、プラスチックごみによってどんな問題が起きているのか、現在どんな対策が行われているのか、どんな課題が残されているのか、現状を知る必要があります。
リサーチしなければ、すでに対策されていることや技術的に難しいことに挑戦してしまうかもしれません。全体を把握した上で、自分はどの問題にフォーカスするのかを考えましょう。
例えば、「プラスチックごみによって海にマイクロプラスチックが流出している。海中のプラスチック量は放っておくと25年後には魚の量を上回る。日本で最も流出しているのは・・・だが、せめて家庭から出るプラスチックごみを削減したい」といったように、リサーチ結果からテーマを絞ることができます。
質問:「納得のいかない校則をなんとかしたい」というテーマの場合、あなたなら何からリサーチしますか?
「納得のいかない校則をなんとかしたい」というテーマは、すでに絞り込まれています。ですので、例えば、ほかの中学や高校の校則、海外の校則についてリサーチするのはどうでしょうか。なぜ納得がいかないのか、理由が見えてくるかもしれません。
なんのためにリサーチするのかを明確に
プラスチックごみの例は「どこにフォーカスするのか」を目的としたリサーチです。大きなテーマから取り組むべき問題を絞り込むために、問題の背景や現状の取り組みについて調べました。
校則の例は、すでに小さな問題に絞り込まれていますが、それが「取り組むべき問題なのか」判断がつきませんよね。ですので、「校則」そのものをリサーチして、どこにどんな問題があるのかを明確にする必要があります。漠然と「納得のいかない校則をなんとかしたい」と思っていたことが、実は日本の教育の問題点を明らかにするきっかけになるかもしれません。
このように、選んだテーマによってリサーチの目的が異なります。なんのために、どんなリサーチをするのかを明確にしておくといいでしょう。そうでないと、延々とリサーチが続き、先に進めなくなってしまいます。
問題だけでなく可能性も探索
社会課題をテーマに考えると、問題だけに目が行きがちです。でも、リサーチしていくうちに可能性を見つけることもできるはずです。注目されていない地域資源、廃棄されてきたもの、排除されてきた人々・・・これまで価値がないと思われていたことに価値があることも見えてくるでしょう。
地域外から見たら重要に見えなことが、実は地域の人たちにとって重要な意味を持つ、なんてこともあるかもしれません。逆に地域の人たちが重要と思っていなかったものが、歴史を調べてみるととても重要なものだった、ということもあります。
まずは、問題も可能性も含めて探索するという姿勢でリサーチしましょう。
いつでもどこでもリサーチ
リサーチは、プロジェクトの初期の段階で行うものと思いがちですが、そのあとも続きます。
例えば、校則のテーマでは、対象となる校則に対してほかの学生はどう思っているのか、教師はどう思っているのか、保護者はどう思っているのかを調べることで、なぜ現状が変わらないのか、変えるとしたらどこに働きかけるべきなのかが見えてくるでしょう。
どこに働きかけるのか見えてきたら、次はどう働きかけるのかを考える必要がありますよね。その場合も、過去に生徒会で取り上げられたことがあったのかを調べたり、生まれたアイデアに対してほかの生徒や先生に意見を聞いたりと、リサーチすることはたくさんあります。アイデアが実現したあとも、改善するために意見を聴くなどリサーチが欠かせません。つまり、どのプロセスでもリサーチが必要なんです。
プラスチックごみ削減のテーマの場合、どんなリサーチが必要だと思いますか?
プラスチックの性質や種類、どんなものに使われているのか、廃棄されやすいorリサイクルしやすいものなど、プラスチックそのものに関すること、つくる側と使う側の意見、プラスチック代替品の事例も調べる必要がありそうです。
5つのリサーチ方法
リサーチの場面がたくさんあることは理解できましたよね。リサーチにはいろいろな方法があります。ここでは、5つの方法を紹介します。
デスクリサーチ
書籍・論文・記事など資料を活用して情報を集めて、整理する
フィールドリサーチ
テーマに関わる場所や人々を観察して気づきを得る
インタビュー
話を聴き、相手を知り、本質的なニーズを理解する
質問紙調査(アンケート調査)
対象とする人々の傾向を掴むため、定量的な情報を収集する
ワークショップ
対象とする人々に意見交換してもらったり、アイデアを出してもらったりしながら、新たな視点を得る
フェーズごとのリサーチやリサーチの具体的な方法については、「解説:デザインリサーチ編」を参照してください。