デザインする力はデザインプロセスとどう関係してるの?
「デザインする力を育てよう」で9つのデザインする力を紹介しました。でも、それがデザインプロセスのどこで活かされるのかよくわからないという人もいると思います。ここでは、ソーシャルデザインプロジェクトの流れに沿って、どんなデザインする力が必要とされるのか見ていきましょう。
先に言っておきますが、すべての力を均等に磨くのはとても難しいと思います。強みと弱みを理解して、強みを磨いていきましょう。弱い部分は別の人に助けてもらえばいいんです。だからこそ、どういう場面でどんな力を持った人が活躍できそうなのか知っておきましょう。
9つのデザインする力
デザインする力は、次の9つでしたね(このガイドブック内での定義です)。
- わからないを受け入れる力
- 五感で捉える力
- 共感する力
- 俯瞰する力
- いろんな視点をつなぐ力
- 創造する力
- 実践する力
- ポジティブに捉える力
- コラボレーションする力
では、プロセスに沿ってどんな力が必要になるのか、考えてみましょう。
プロジェクトの準備
1. テーマを見つける
テーマを見つけるときに必要なのは、自分の中の問題意識でしたね。問題意識はいつ生まれるのでしょうか。振り返ってみると、誰かの痛みを感じたときや、なにかしらの社会課題を知ったときだったかもしれません。そう考えると、必要な力は「五感で捉える力」「共感する力」「俯瞰する力」でしょう。
2. 探索する
テーマを絞り込んでいくときは、手探りでリサーチしていきます。ここで求められるのは「わからないを受け入れる力」です。加えて、「共感する力」を活かして当事者に話を聞いたり、フィールドワークを通して相手を理解する必要があります。さらに、近くから見るだけでなく、「俯瞰する力」で全体を理解する必要もあります。
3. プロジェクトを組み立てる
プロジェクトを組み立てるときは、「俯瞰する力」で全体を見通す必要があります。期間が3ヶ月だとして、いつどこでどんなことをすればいいのか、どんな人の協力を得る必要があるのか、スケジュールに加えて関係者(ステークホルダー)についても考えておく必要があります。
不確実なことが多いので「わからないを受け入れる力」も求められます。リスクを考えることは必要ですが、リスクばかりを考えると前に進めません。そういう意味では「ポジティブに捉える力」も必要でしょう。
4. 仲間を見つける
プロジェクトが始まったら、仲間探しはずっと続くでしょう。ほとんどの場合、メンバーが入れ替わります。参加する理由もやめる理由もさまざまですが、どちらにも寄り添うこと・・・つまり「共感する力」が必要です。また、プロジェクト全体で、どんな役割の人が不足しているのかを「俯瞰する力」で把握することも必要です。
もちろん、「コラボレーションする力」が必要なのは言うまでもありませんね!
プロジェクトの実践
5. 探索・探究する
探索・探究するためには、「わからないを受け入れる力」「五感で捉える力」「共感する力」「俯瞰する力」が必要です。わからないことを前提としながら、対象に近づいて五感で捉え、話を聴いたり体験したりすることで共感しつつ、ちょっと距離をおいて周辺も含めて俯瞰する必要があります。
とはいえ、メンバーそれぞれに得意不得意があるので、それぞれの強みを活かしながらリサーチするといいでしょう。また、多様なメンバーが関わることも大切です。それによって、さまざまな視点を集めることができます。
6. 問いをつくる
問いをつくるためには「いろんな視点をつなぐ力」が最も求められます。リサーチして集めたデータをどう解釈するのか。そのデータからどんなことが言えるのか・・・常識を覆すようなインサイトを得るためには、いろいろな視点をつないで新たな視点を導きます。また、「俯瞰する力」を活かして、複雑な関係性を解きほぐし、影響の大きい核となる要因を見つけることも必要です。
また、さまざまなデータから可能性や希望を見出す「ポジティブに捉える力」も大切にしたいですね。
7. アイデアを広げる
「創造する力」はもちろんのこと、問いからアイデアを広げるときも「いろんな視点をつなぐ力」が活かされます。資源や課題、利用する人、生活の中で使われているものや行為、具体的なエピソードなどをつないで、新しいアイデアを生み出すことができます。
8. かたちにする
アイデアを絞り込み、試作品や完成イメージをつくります。プロダクトやグラフィックのデザイナーとともにつくるケースもあるでしょう。でも、「創造する力」を活かせば、頭の中のイメージを伝えるものはつくれますよね。
さらに、サービスやプロダクトをどのように提供するのか、提供者や利用者にはどんな人がいるのかなど、サービスの流れや関係図を描く必要もあります。利用する人や提供する人に寄り添う「共感する力」も全体を見通す「俯瞰する力」の両方が求められますね。
9. ものがたりを伝える
いよいよ、お披露目の日がやってきました。これまでもさまざまな人たちに協力してもらったと思いますが、本番はこれからです。関係者に企画を伝え、実現のために協力者を増やす必要があります。お金で支援するのか、物品で支援するのか、一緒に活動する仲間になるのか・・・協力のかたちはさまざまです。
わかりやすく伝えるためには「創造する力」が必要ですし、関係者に働きかけて自分たちで実現することを目指すのなら「実践する力」「ポジティブに捉える力」「コラボレーションする力」が欠かせません。
10. 振り返る
活動のプロセスでも振り返りを行ってきたと思いますが、ひとつの区切りでこれまでのプロセスを振り返りましょう。また、成果の評価も必要ですね。「共感する力」で仲間に寄り添いつつ、「俯瞰する力」で客観的に評価することも必要です。
11. 小さく試す
さて、いよいよ実践です。実践にあたっては、すべての力を総動員することになります。多様な力を持った人が必要と言い換えてもいいかもしれませんね。ひとりの人がすべての力を持つのではなく、多様な人の多様な力をお互いに大切にして生かせばいいんです。
12. 旅を続ける
小さく試したあと、きっとあなたは新しい力を手に入れていることでしょう。9つの力を意識することで、多様な力を持った仲間を尊重でき、自分自身の強みを伸ばすことができます。パワーアップした仲間たちと、ぜひ旅を続けてください。